Gerald Alston / Open Invitation

 前作のセルフタイトルアルバムは、さすがマンハッタンズのリードヴォーカリストと思わせる見事なバラード曲が粒ぞろいの名作であったが、これに続く2作目となる(1990年発表)。

 今回も冒頭は前作の流れとも言えるバラード曲”Slow Motion”。ここで彼が見せる表現力には本当に感心する。文句無しのベストトラック。濃厚なStan SheppardとJimmy Varnerのプロデュースにもよるところが大きいのだろう。

 この後も、やはりバラード中心の曲が続くが、中盤から少し雰囲気が変わるのが分かる。”I’ll Go Crazy”以降の曲は一部Levi Seacer, Jr.のプロデュース曲を除いてはJames Anthony Carmichaelによるプロデュースになるのだ。James Anthony Carmichaelのプロデュースは、同じバラード曲でもかなりサラっとしたアプローチであり、前作の濃厚さが非常に気に入った人にとっては少し物足りなくなるかも知れない。でもヴォーカルのうまさ、表現力の豊かさで単なるブラコン・バラードにはなっていない。ただ、Brenda Russellとのデュエット曲である”Tell Me This Night Won’t End”は、ヴォーカルの出来は良いのだが今一つソウルフルさに欠けていて残念。

 最後の”Any Day Now”は、1960年代のBurt Bacharachの名曲。1982年にカントリー歌手のRonnie Milsapにより全米Top20ヒットにもなった曲である。作品全体の流れからすると、ちょっとバランスが合わない気がするのが残念。まあ、おまけ程度に聴くのが良いだろう。

Jimmy Buffett / Songs You Know By Heart

 日本では想像もできないほどアメリカの人たちに愛されているJimmy Buffett。彼の1973-79年の間に放ったヒット曲を集めたベストアルバムである(1985年発表)。

 Jimmy Buffettを聴くと、真冬であろうと夏が待ち遠しくなってしまう。彼の曲は夏の海辺を想像させる。これは彼がフロリダ出身であり、レコーディングの多くもフロリダで行われているとか、曲にはスティールドラムなどカリブ海エリアで使う楽器が登場したりとか、曲のタイトルが夏のリゾートっぽかったりする、ということがあるのだろう。

 本作を聴いても分かるように、彼の持つ明るさ、これが多くの人に支持される理由であろう。1977年に全米8位まで昇るヒットとなった”Margaritaville”や、1979年のトップ40ヒット “Fins”、トロピカルな”Boat Drinks” “Volcano”など、あまり難しいことを考えずに楽しく聴くと、とても癒された気分になれる。リゾート感覚溢れる、いい意味での脳天気さがとてもよろしい。音楽の楽しさをつくづく実感するのである。

 このベストアルバムが気に入ったら、是非他のアルバムも聴いて欲しい。彼は今でもコンスタントにアルバムを発表しているし、2000年代に入っても出すアルバムほとんどが全米で大ヒットになっているので、選択肢や入手性には絶対困らないはずだ。

Gerald Alston / Gerald Alston

 Gerald Alstonは1951年生まれ。1970年に若干19歳でマンハッタンズのリードヴォーカリストに抜擢。以来20年近く数多くのヒット曲を世に送り出した。そんな彼が1988年に発表した初のソロアルバムである。

冒頭のバラード、”Take Me Where You Want To”が何と言ってもベストトラックである。S. SheppardとJ. Varnerのアレンジは非常に美しく、彼のエモーショナルかつ熱気に溢れる表現力と共にすばらしい出来となっている。

この曲以外にもバラードはよく完成されていて、特にイーグルスのヒット曲でも有名な”I Can’t Tell You Why”、カーペンターズの大ヒット、”We’ve Only Just Begun”のカバー2曲がいずれもすばらしい。”I Can’t Tell You Why”について言えば、オリジナルが比較的サラッとしたヴォーカルであったのに対して、Gerald Alstonのヴァージョンはいかにもソウルバラードという感じの粘っこさがあって、オリジナルと聴き比べると面白いかも知れない。また、”You Laid Your Love On Me”、”Activated”のようなダンスナンバーについても、さすがと言えるヴォーカルを聴かせてくれて、バラード曲に勝るとも劣らない出来となっている。

この時、Gerald Alstonは37歳。ソウルシンガーとしてはまだまだ若手と言える年齢であるが、これだけ充実したヴォーカル作品の数々を聴かせてくれるのは、やはりマンハッタンズというトップレベルのヴォーカルグループのリードヴォーカルを19歳から取ってきた経験、というものが大きいのだろう。この歳にしてこの貫禄、である。

本作品は、ビルボード誌のR&Bアルバムチャートで最高位18位という結果になっているが、1980年代後半のソウルミュージックシーンの中では最高の作品の一つと言っても良いアルバムである。

Steely Dan / Aja

 1977年に発売された、Steely Danのアルバムとしては代表作の一つである。
 Steely Danといえば、Donald FagenとWalter Beckerの複雑かつ完璧なまでのサウンド作り、Gary Katzのきっちり計算されたプロデュースで各ミュージシャンが自分の持ち味を出すと言うイメージがあるが、このアルバムももちろんそう言った1枚に入る。

 冒頭の”Black Cow”から最後の”Josie”まで、まったく手を抜いた所がないと言える音で、どれが良いとか悪いとかいう風に論ずること自体が無意味かもしれない。だが敢えて書くと、”Peg”におけるJay Graydonの、Larry Carltonよりも評価されたと言うギターソロ、”I Got The News”でのヘンチクリンなコード進行、一番ロック色の強い”Josie”でのJim Keltnerによる渋いドラムスなどなど、聴き所がたっぷり。

 しかしながらベストトラックは、アルバムタイトル曲である”Aja”であろう。
美しいJoe Sampleのピアノで始まる独特のコード進行、Steve Gaddの史上最高とも言える、感動すら覚えるドラミング、Wayne Shorterの見事過ぎるサックスソロなどなど、すべてが完璧。

 1977年の作品だから、34年前の作品と言うことになるのだが、1世紀の3分の1経つと言うのに全く古臭さを感じさせない、洗練されたサウンドであり、ロック史上最高作品の一つと言って良いと思う。

Jimmy Buffett / Hot Water

 夏になると無性に聴きたくなるアルバムの一つが、アメリカ人に長年愛されているJimmy Buffettの1988年発表の作品、Hot Waterである。

プロデュースは、Jimmy Buffettの作品ではお馴染みのMichael Utley, Russ KunkelとRalph MacDonald。バックにアメリカ南部のリズム&ブルース界の大物、Steve Cropper, ニューヨークを拠点に活動しているセッションミュージシャン、Hugh McCrackenを中心としたCoral Reefers Bandという、これまたJimmy Buffettらしい夏っぽい名前のバックバンドをメインに演奏は進んで行くが、今回は参加アーティストがすごい。The Neville Brothersの面々は、”My Barracuda”で実に黒っぽいバックヴォーカルを披露、そしてこの曲にはSteve Winwoodもオルガンで参加。爽やか系アメリカン・ミュージックには欠かせないイーグルスのTimothy Schmitは、”L’Air De La Louisiane”、”Prince Of Tides”、”Great Heart”の3曲で実に彼らしいバックヴォーカルを聴かせてくれる。”Pre-You”ではGrover Washington, Jr.のメロウなサックスがたまらなく良い。バックヴォーカルに関して言えばその他にもRita Coolidgeが”Bring Back The Magic”、そしてJames Taylorが”Pre-You”、”L’Air De La Louisiane”の2曲に参加している。

私にとってベストトラックは何といっても”Pre-You”。実に印象的でロマンティックな歌詞と、最高にオシャレで、優しく聴かせてくれるGrover Washington, Jr.のサックス…。夏の夕方、浜辺に映える太陽を見つめながら聴けたらすばらしい、そんな雰囲気を持った素晴らしいバラードである。

あとはシングルカットされた(あまりヒットはしなかった)”Bring Back The Magic”。これも佳曲で、実に夏っぽい、ビーチに飛び出して行きたくなるような彼独特の雰囲気に満ち満ちている。
その他にもスティールドラムが登場するトロピカルな”King Of Somewhere Hot”、アフリカン・ビートも聞こえてくる”Great Heart”などなど、やはりJimmy Buffettならではのフロリダ色一杯の、そんな楽しいアルバムである。もっともっと評価されて然るべき、リゾート感覚溢れるかなりゴキゲンな作品である。

八代亜紀 / 夜のアルバム

 2012年に発表されたジャズヴォーカルアルバム。もともと八代亜紀は演歌歌手としてデビューする前はクラブ歌手だったということもあり、原点に帰った作品ということができる。プロデュースは小西康陽。

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン、クライ・ミー・ア・リバー、サマータイムのようなスタンダードを始めとして、枯葉のようにシャンソンをジャズアレンジにしたもの、スウェイのようにボサノバアレンジのもの、あるいは「五木の子守唄」「私は泣いています」のように日本の曲をアレンジしたものと、選曲は多彩。演奏はとてもシンプル。八代亜紀の、普段とは一味違った艶っぽいヴォーカルが本作の最大の魅力である。

新鮮味があるし、ヴォーカリストとしての八代亜紀の魅力は十分感じられる。また先入観もあるのか、昭和の時代に赤坂辺りのナイトクラブでブランデーグラスを片手に聴き入っているような感覚に陥るから不思議だ。まさに夜のアルバムである。

ただ、選曲のバラエティさの割にあっと驚く作品がないのがこれまた不思議。国内外の作品をうまく料理しているからこそかも知れないが、そんな新鮮さがあればもっと素晴らしい作品になっていたかも知れない。

是非第2弾、第3弾を、と期待したい。

10cc / 10cc’s Greatest Hits 1972-1978

 私が生まれて初めて購入したポップCD。(ちなみに私が初めて購入したCDは、ジャズのアート・ブレーキーのライブアルバムであった)
 当時を思い出してみると、CDっていうものはデジタル化された音をそのままディスクに閉じ込めたものだから、音がすごくいいと理解していた。だから音の凝った作品を買おう!と決めて池袋の某輸入CDショップを彷徨って見つけた作品である。

 このアルバムは、数ある10ccのベストアルバムの中でも、全盛期であったMercury時代のものをピックアップしたもの(ドイツ編集盤)で、一番良い選曲がなされていると私は思う。彼らのベストアルバムには、えてしてGodley &Creame時代 (つまり10cc解散後)の作品も含まれたものが多いが、私としては、10ccは10ccとして聴きたいなあ、と思うのである。

 もろビートルズの某曲か?と思わせる”Donna”、独特のユーモアに富んだ”Life Is A Minestrone”など、前半の聞きどころは多く、楽しめる。後半は、彼らの代表作の1つでもある”The Things We Do For Love”(よくテレビCMのBGMとして使われている)や、レゲエ・ポップな”Dreadlock Holiday”、そしてポップ史に残る不朽の名作”I’m Not In Love”など、ヒット曲がずらり。この2曲はいずれも私の大好きな曲でもあります。

 今までこう書いてみると、結構10ccってCMソングとして使われるケースが多い。やっぱり現在のCM制作の中心となっている世代が、10ccを聴いて育ったのかなという気がする。70年代を数々の名曲で走り抜けた10ccの歴史をひも解くには最適の1枚と言える。

Dr. John / Gumbo

 1972年の作品。ニューオリンズで生まれ育ち、ニューオリンズの音楽環境に囲まれて育ったDr. Johnが、Los Angelesに拠点を移した後、自らの原点に帰って故郷の音楽をまとめあげた、そんな感じのアルバムである。ニューオリンズR&Bのお手本とも呼ばれている秀作である。

 曲の多くは昔から歌われているニューオリンズのクラシックである。ご存じ”Iko Iko”から始まり、その後もProfessor Longhairの影響を強く受けた独特の「うねり」を堪能することができる。Dr. Johnのピアノ演奏は当然のことながら、誰にも真似ができないあのダミ声は魅力的である。

 特にお薦めはピアノ一本で歌われる”Tipitina”。この曲で思い出すのは、遠い昔「ポッパーズMTV」という番組にDr. Johnが出演し、ピーター・バラカン氏の前でこの弾き語りをやったことがある。この時の演奏は背筋がゾクゾクしたことが今でも忘れられない。
 これ以外にも、ニューオリンズR&Bのスタンダードとも言える”Big Chief”、”Junko Partner”あたり、また1950年代のR&B色の強いロックンロールメドレー(ヒューイ・スミス作品)など、ロックンロールをニューオリンズ風に料理した感じの曲も収録されている。アメリカ南部のダンスパーティーなんかでかかりそうな、楽しい曲たちである。

 ニューオリンズ音楽とは何ぞやという疑問をお持ちの方はこの流れるようなピアノを聞いてノックアウトされて欲しい。ロック史にも強い影響を及ぼしたと言える本作品、是非聞き逃してはいけない。

Yellowjackets / Like A River

 1993年発表の作品。Yellowjacketsは、コンテンポラリー・ジャズのグループの中では好きな方である。各パート、特にリズムを形成しているベース (Jimmy Haslip)とドラムス (William Kennedy)による黒人音楽寄りのタイトで細かい「刻み」がたまらないからである。本作においても、ポップよりと言うよりはファンキーさを前に出した曲が印象的。

 特に、Miles Davisに捧げたと言われる”Dewey”は名演。ここで聴かせる、ファンク色の強いリズムに乗せて演奏される、ミュートを聞かせたトランペットはまさにMilesに捧げられたものである。この曲が本作の中では一推しであろう。これを聴くと、改めてMilesのアルバムを聴き直してみようかな、という気になる。ちなみにこのトランペットのゲスト演奏はTim Hagans。彼は本作品では “Suenos”にも参加していて強い存在感を示している。もっと大々的にクレジットしてあげてもいいのでは?と思える活躍である。

 冒頭に書いたリズム・セクションのたまらなさと言うことで言うと、冒頭の “Man Facing North”におけるJimmy Haslipのベースソロは技術的にもホレボレするもので、是非お勧めしたい一曲。ちょっと1980年代後半のPat MethenyのStill Lifeあたりを彷彿とさせるバッキング・ヴォーカルが聴けたりもする。それと “Suenos”におけるWilliam Kennedyの変則リズム。こちらのうまさは、「技術高いっ!」と唸ってしまう職人芸である。

SUGAR BABE / Songs

 *最初にお断りしておく必要があるのだが、現在入手できる本作品のバージョンは2種類で、そのうち最新のものは「30年記念盤」である。リマスタリングされ、曲数も増えた上に安い、という違いがある。:

 この、1975年にエレックレコードから発売されたアルバムが1994年にCD化されることになったとき狂気乱舞したのは私だけではないはずだ。1975年と言う年、私はまだ9才、当然のことながらシュガーベイブを実体験はしていなかった。しかし高校生の頃(つまり1982年頃)、山下達郎のアルバムを聴き始めて、同時にシュガーベイブのことも知ったのだが、彼等のアルバムを聴く機会というのは全くなかった。
 この時から10余年、ようやくCD化により聴くことが出来たのだ。オリジナルアルバムは11曲の収録であるが、このCD化に際して、デモとして彼等がレコーディングした4曲 (有楽町・ニッポン放送のスタジオで録音されたことから「LFライブ」と言われている)、解散コンサートでのライブ3曲の合計7曲の未発表テイク付きである。

 当時若干22才だった山下達郎のあふれる才能、個性的で透き通った大貫妙子のヴォーカル、などなど。この2人の絶妙なバランス(特に大貫妙子が気に入った)と、その他上原裕、村松邦男(今も現役として頑張っている)らの演奏レベルの高さ、これが今から35年以上も前の1975年にレコーディングされていたかと思うとつくづく驚きを隠せない。
 シュガーベイブの活動期間は約3年と短かったが、この間にリリースされたこの唯一のアルバムは、日本の歌謡史に残る名作といえる。決して大げさには思っていない。是非御一聴を。

 なお上記の通り、最新で入手できる「30年記念版」には、上記18曲に加えてSUGARの別バージョンとDOWN TOWNのカラオケ(!?)が収録されている。価格も安くなっている。リマスタリングの所は私も聴いていないので確認できないが、特にLFライブの4曲がクリアになったと、概ね好評のようだ。