東京エリアにずっと住んでいると、東京の宿にはなかなか詳しくなれない。自分で泊まることがないから、まあ当然と言えば当然。
だからといって、「東京 ホテルガイド」みたいな本があったとしても、別に必要ないし、読んでいても別段楽しいものではないだろう。やはり「何か」がないと意味がないのである。
そこで登場するのが泉麻人氏。本書は、いかにも泉麻人氏らしい「ディープな宿」の宿泊体験記である。
ペニンシュラの宿泊体験を読んでも、別に面白くはないだろう。コンラッド東京のことが書いてあったところで、ラグジュアリーなホテルだなあとは思ってもドキドキ感はないだろう。
しかし、荻窪の住宅地の中に昭和初期の建物が突如現れて、建物に「西郊ロッヂング」なーんて書かれていたら、「あれ?何だろ、これ。」ということになるだろう。
モノレールで羽田空港に向かう途中、空港からやや外れた寂しい場所に古めかしいホテルを見たことのある人も多いだろう。
武道館の傍らに格安で宿泊できる施設があったら、ちょっといいな、と思うだろう。
あまり書くとネタバレになってしまうので、これ以上は書かないが、本書では、普通の東京エリアの住民がまず泊まることのない、でも気になる、懐かしさを感じる宿に投宿し、そのホテルの雰囲気、また周りの人々の暮らしまで紹介してくれる、泉麻人氏ならではのディープなエッセイ集であり、東京旅行記である。
あまりに近すぎて見過ごしてしまうものでも、そこに投宿することで見えてくる風景、というのがある。普通は宿泊などしないから、まさに未経験のエリアをかいま見ることができる。高級ホテルでは絶対味わえない独特の風情を感じ取ることができる。
それにしても、東京の住民が東京のホテルに泊まりゆったり過ごすのは、何と贅沢なことだろうか。一度問題にならないように経験をしてみたいものだ。









コメントする