1999年に発表された井上陽水の2枚組、35曲入りのベストアルバムである。
井上陽水くらいのアーティストになってしまうと、あちらこちらからいろんなベスト盤が発表されていて、大概どれにしたらよいか迷ってしまう。
個人的には、アルバムとしてバランスが取れているベストは「レ・ビュー」だと思っているが、これは80年代以降の陽水の活動に焦点を絞っており、70年代の陽水を全く聴くことが出来ない、という欠点がある。田村正和のドラマで「リバーサイドホテル」を知ったひと向き、という感が否めない。またこれは現在廃盤で入手が困難である。
この作品は、2枚組ということではあるが、井上陽水の99年までのキャリア全体を見るという意味では一番よいアルバムと考えている。「傘がない」時代の皆さんには、80年代以降の音源や奥田民生や安全地帯とのコラボレーションを楽しめるし、「少年時代」以降のファンには、逆に70年代の陽水の歌で衝撃を受けることが出来る。これを実現するには今まで彼が発表したアルバムを全部聴いて行くのがベストだが、そうもいかないというもの。
そういう意味では、まずこのアルバムで全体を聴いて行き、興味を持った時期の作品、「あれ?この曲がない」と言ったものを別途アルバムで購入し、楽しむ、という姿が正しいと思う。
私としては、このアルバムに収録された美し過ぎる一品「帰れない二人」のライブバージョンを求めに、1990年発表のNHKホールでのライブ収録作品「クラムチャウダー」を探そうと思う。以前LPで持っていたが、今はLPを再生できないのでCDで買い直しかもしれないが…