タイトル通り、角松敏生がデビューした1981年以降、1987年までに発表した作品からピックアップされたベストトラックを再録した作品集。2枚組、20曲と言うボリュームである。
角松敏生は、卓越した歌唱力、ソングライティング、アレンジ、パフォーマンス、そしてリゾート感溢れるおしゃれな曲を世に発表し、当時の「おしゃれで進んでる」若者を中心に絶大なる人気を得ていた。お茶の間に人気の、というアーティストではなかったが、”TAKE YOU TO THE SKY HIGH”がCM曲として使われたりすることでの認知度はあった。
山下達郎と比較されることもあるが、音楽に対するストイックなまでの姿勢は似ているかもしれない。時代を先取りし過ぎて過小評価されていたアーティスト、ということでいうと山下達郎よりも角松敏生のほうがそうであろう。デビュー曲である”YOKOHAMA TWILIGHT TIME”を聴いても、全く色褪せてなく、おしゃれ度だって非常に高い。
さて本作。初期に多かった「夏全開!」と言う感じのドライブ感溢れた爽やかサウンドから、都会的な黒人音楽の影響を受け始めた80年代後半にかけての曲が収録されて、非常に興味深い。私の大好きな必殺!バラードの”RAMP IN”とか、ブラックコンテンポラリーミュージックの要素をふんだんに盛り込んだミッドテンポのチューン”I’LL NEVER LET YOU GO”と言った、とても日本の80年代の曲とは思えない洗練されたサウンドがぎっしりで大満足。高校時代 (1984年頃)曲中のラップのカッコ良さにしびれまくった”TOKYO TOWER”が収録されていないのが非常に残念だが、これは都会的な雰囲気が詰まったオリジナルアルバム “GOLD DIGGER”を入手して聴こう。
ともかく。20曲収録された2枚組作品、100分の長丁場ではあるが、そんなことは気にならない。彼の実力を改めて認識するとともに、いかに彼が過小評価を受けていたか、ということがよく分かると思う。今回の再録は、ちょっと彼のセルフバックヴォーカルがちょっと分厚過ぎるかな、という嫌いがあるけれど、彼の魅力をちょっとデフォルメしていると考えればいいのではないかなと思う。私はあまり違和感がない。今まで角松敏生の音楽にあまり触れたことがない人も、騙されたと思って是非聴いて欲しいと思う。
ちなみに、同様のコンセプトで1988年から1993年までの作品を収めた2枚組のアルバムも発売されている。これもなかなか良いが、また別の機会にご紹介ということで。