矢沢永吉 / THE GREAT OF ALL – Special Version –

 1993年発売の矢沢永吉ベスト。もともとは1980年ころに発表された “THE GREAT OF ALL” という初期のベスト (12曲収録) に4曲追加したスペシャルバージョンという位置づけである。

 矢沢永吉のベストは、もう訳が判らなくなるくらい沢山発売されているが、本作は70年代中盤から後半あたりの、キャロル解散後ソロに転向した初期の曲から選ばれている。永ちゃんが「時間よ止まれ」の大ヒット以降80年代に多少売れ線ロックに走ってしまう前の、暴走族や不良達に慕われていたと言われている時期の作品、ということになる。

 もちろん、基本は「黒く塗りつぶせ」や「世話がやけるぜ」に代表される、70年代の不良たちが好んで聴いてた(と言う印象のある)正統派ロックンロールな訳だが、本作を聴くと案外とそれだけではないことが分かる。

 「雨のハイウェイ」はカントリーを思わせるペダルスティールが大活躍しているし(ちなみに商業的に一番成功した「時間よ止まれ」のバックにもペダルスティールが使われている。)、「ライフ・イズ・ヴェイン」「ウイスキー・コーク」のようにポップさすら感じる曲調の作品もある。「ライフ・イズ・ヴェイン」は、事故で死んだバイク好きの仲間 (ついリーゼントの暴走族をイメージしてしまうのだが) を悼むような内容で、軽く泣けます。
それから、かなりリラックスしたジャジーでめっちゃかっこいい「バーボン人生」と言う曲も。

 そして、この頃の永ちゃんで出色なのはバラード。「チャイナタウン」や「長い旅」のような、心にジーンと来る名曲は、絶対に押さえておくべし。特に、タイトルで想像がつく、横浜を舞台にした前者は名曲中の名曲。

 ロックンロールもバラードもここまで完璧にかっこ良く歌い切ってしまう日本のヴォーカリストは、やっぱり永ちゃんをおいて他にはいないということを改めて認識させてくれる、そんな作品である。もしかしたら、日本の音楽のジャンルには、唯一無二の「YAZAWA」というジャンルがあるのではないか、とさえ思わせる。

Tracks:
01: バイ・バイ・サンキュー・ガール
02: 黒く塗りつぶせ
03: ゴールドラッシュ
04: チャイナ・タウン
05: 古いラヴ・レター
06: 世話がやけるぜ
07: 時間よ止まれ
08: キャロル
09: ライフ・イズ・ヴェイン
10: ウイスキー・コーク
11: 雨のハイウェイ
12: バーボン人生
13: さめた肌
14: Mr. T
15: 苦い涙
16: 長い旅

Author: tomyt

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