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人気コラムニスト、泉麻人氏によるコラム集。実業之日本社刊の雑誌、「J-Novel」で連載されていたものだ。
内容は、何となく人々の生活に溶け込んでいる法則、いわゆる「お約束」について開設をしたもので、これは泉氏の大得意とする分野である。
例によって、泉氏自身の経験に基づいた、独特の掘り下げ方が秀逸である。
あまりネタバラシしてもけないが、例えば大相撲中継における、日常会話では使うことのない言い回し、天気予報で使われる、かなり特殊な用語(天気好きにはたまらない)など、他のコラムニストでは決して書かれることのないユニークな内容揃いである。
また、泉氏の最も得意とするテレビネタ(これこそ泉氏の著書では「お約束」のジャンル)についても、さすが元TVガイド編集者らしい多くの知識・知見から述べられている。
本書には30の「お約束」について書かれているが、どれもが私自身も経験しているものであり、「なるほど」とうなずいてしまうと同時に、私自身の行動パターンを読まれているようで、何かこそばゆくなってくる。
泉氏のコラムの魅力はまさにここにあり、読み終えた後の爽快感と、「まだ読み続けたい」という欲求が交錯するのだ。私と同世代 (1966年生まれ)、あるいは少し上くらいの世代の方には、一寸した合間の息抜きに是非お勧めしたい本である。
そして、泉氏の著書ではおなじみの蛭子能収さんのイラストも、相変わらず味があってよい。
2007年初版品。知られているようで知られていない、日本の県境の成り立ちについて、主に明治初期の廃藩置県の頃以降の出来事を基に説明したものである。
正直、廃藩置県で従来の五畿七道から府県制になった後も、頻繁に県の合併・分割が行われていたのは知らなかった。帯にも書いてあるが、四国には当時高知県と愛媛県しかなかったこと。廃藩置県により3府302県もの府県が出来上がったが、半年後には3府72県にまで大幅減少したこと、石川県が日本一人口の多い県であった時期があったことなど、雑学的な知識が満載である。明治初期のこの辺の変遷を知るには非常にまとまった資料と言える。
また、私の長年の疑問であった「県境未定地」「飛び地」といった不思議なものについても、一通りの解説が具体例とともにされており、参考になった。
ただ、約200ページの書籍の中にできるだけ多くの情報を入れようとしたためか、事実のみをさっと羅列しただけで、それ以上の掘り下げが少ないような印象を受けた。もう少し突っ込んでの説明があれば、もっと興味がわいたかもしれない。
とは言っても、学問書ではなく雑学書に近い体裁であり、いろいろ参考にはなると思う。構成も、地図がふんだんに使われているので非常に分かりやすい。
たかが県境、されど県境。これは明治時代、いや江戸時代にまで遡る戦いの歴史そのものであるということを認識させてくれる本であった。
元JRの運転士である著者が、あれだけ重い鉄のかたまり(電車)と人間(乗客)をあれだけの速い速度で安全に動かし、指定されたところぴったりに停止させる仕組みについて説明した作品である。2008年初版。
本のタイトルや、ざっと流し読みをした感じでは、いかにも鉄道好き向けの内容、という第一印象であったが、どうしてどうして。しっかり冒頭から読み進めて行くと、この電車というものの仕組みと、これを安全に動かすための設備などが懇切丁寧に説明されている。一部数学的・物理的な説明の箇所があるが、この説明も至極容易であり、専門的な知識が必要になる部分はほとんどない。
また説明自体も、単なる羅列ではなく、実例を基に説明されているので非常に分かりやすい。
長年電車を運転してきた著者だからこそ書ける細かい部分も、非常に容易なコトバで説明がされていて、非常に読みやすい。この読みやすさに、著者の電車への思い入れや愛情を感じるのである。
電車のことを良く知らない人にとっては、例えば駅間や駅構内にある信号は何の信号機で何を表しているのか、また線路近くにある、4とか6とか70とかの数字は何を表すのか、などなど多くの知識を得ることができる。また、多少電車のことを知ってる人にとっては、電車を走らせる時の加速であるとか、止める時のブレーキのかけ具合をどのような状況判断で行っているのか、と言った、ちょっと踏み込んだ知識を得ることができる。
初心者からマニアまで十分楽しめる作品となっていて、日常的に電車のお世話になっている人たちには特にお勧めである。
東京エリアにずっと住んでいると、東京の宿にはなかなか詳しくなれない。自分で泊まることがないから、まあ当然と言えば当然。
だからといって、「東京 ホテルガイド」みたいな本があったとしても、別に必要ないし、読んでいても別段楽しいものではないだろう。やはり「何か」がないと意味がないのである。
そこで登場するのが泉麻人氏。本書は、いかにも泉麻人氏らしい「ディープな宿」の宿泊体験記である。
ペニンシュラの宿泊体験を読んでも、別に面白くはないだろう。コンラッド東京のことが書いてあったところで、ラグジュアリーなホテルだなあとは思ってもドキドキ感はないだろう。
しかし、荻窪の住宅地の中に昭和初期の建物が突如現れて、建物に「西郊ロッヂング」なーんて書かれていたら、「あれ?何だろ、これ。」ということになるだろう。
モノレールで羽田空港に向かう途中、空港からやや外れた寂しい場所に古めかしいホテルを見たことのある人も多いだろう。
武道館の傍らに格安で宿泊できる施設があったら、ちょっといいな、と思うだろう。
あまり書くとネタバレになってしまうので、これ以上は書かないが、本書では、普通の東京エリアの住民がまず泊まることのない、でも気になる、懐かしさを感じる宿に投宿し、そのホテルの雰囲気、また周りの人々の暮らしまで紹介してくれる、泉麻人氏ならではのディープなエッセイ集であり、東京旅行記である。
あまりに近すぎて見過ごしてしまうものでも、そこに投宿することで見えてくる風景、というのがある。普通は宿泊などしないから、まさに未経験のエリアをかいま見ることができる。高級ホテルでは絶対味わえない独特の風情を感じ取ることができる。
それにしても、東京の住民が東京のホテルに泊まりゆったり過ごすのは、何と贅沢なことだろうか。一度問題にならないように経験をしてみたいものだ。










