サディスティック・ミカ・バンド / 黒船

サディスティック・ミカ・バンドの名作「黒船」です。

このアルバムが発表されたのは1974年。初めて聴いたのは高校生の時(1985年ころ)であったが、当時は、少し古臭い感じがするけど斬新でヘンなアルバムだな、と良く読むと意味の分からん感想を持った記憶があります。
高校生の頃と言ったら今から20年強前の話になるので、少なくともノスタルジーを感じることはなかっただろうとは思います。ノスタルジーを感じるほど繊細な高校生でもなかったでしょうし。

ともかく、発売当時から名作とは言われていたことは知っていたのですが、良さはあまり強く感じていなかったというのが正直なところです。

で今回改めて聴き直してみました。何せ20年ぶりに聴くのだから、どんな印象を持つんだろう、と思いながら聴きました。

第一印象は「荒削り!」。正直、今回こういう印象を持つとは思わなかったです。
メンバーは泣く子も黙る加藤和彦、高中正義、小原礼、高橋幸宏、ミカ。今年、木村カエラと組んで一時的に復活し、熟練の演奏を聴かせてくれたメンバーたちですが、ここで聴ける32年前の彼らは、若さに任せてぐいぐい攻めてくる荒削りな演奏でした。特に、つい木村カエラとの比較をしてしまいそうな「タイムマシンにおねがい」。今年発表された木村カエラのヴォーカルバージョン(2006年)は、メンバーみんながリラックスして「うまい」演奏をしている感じが印象的です。その一方、オリジナルである、ミカによるヴォーカルのオリジナルバージョンは、実に奔放さを感じるミカのヴォーカルと、今にも突っ走って行ってしまいそうな「若い」演奏です。まだ熟練と言うには早すぎたのでしょう。

その次に感じたのは斬新さ。日本の音楽では、なかなかこういったコンセプトアルバムは存在していませんでした。「黒船」では冒頭の「墨絵の国へ」で江戸時代にスリップし始め、「タイムマシンにおねがい」でタイムスリップ、黒船(3部作)で黒船来訪、その後も江戸時代の町並みが見えたりして、アルバム全体がひとつの物語になっています。

そして、「かっこ良い」。彼らの演奏は、いわゆる「ロックンロール」にとどまらず、黒人音楽の影響があちこちに見られていて、この融合がとてもかっこいいです。これは恐らく小原礼の跳ねるベースの影響が大きいのかな、と思ったりもします。特に「黒船(嘉永6年6月3日)」でのベースプレイには注目です。このかっこよさは特筆ものだと思います。

日本のロックの歴史を知りたい人は当然必携の作品だと思いますし、また純粋にロックが好きな人にとっても、彼らの演奏は今にも通じるかっこよさを持っていますので、是非聴いて欲しいと思います。

また、このアルバムは全体を通して聴いて欲しいです。一部の曲だけピックアップしたりせず、「墨絵の国へ」から「さよなら」までをじっくり通して。一つ一つの作品がまとまって大きな物語に感じることができるでしょう。

Tracks:
01: 墨絵の国へ
02: 何かが海をやってくる
03: タイムマシンにおねがい
04: 黒船 (嘉永6年6月2日)
05: 黒船 (嘉永6年6月3日)
06: 黒船 (嘉永6年6月4日)
07: よろしくどうぞ
08: どんたく
09: 四季頌歌
10: 塀までひとっとび
11: 颱風歌
12: さよなら

Author: tomyt

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