Donald Fagenの1982年発表のアルバム。今でもふと耳にすることができる、という意味ではまさにポピュラー音楽の基本となる作品の一つであると思います。
Steely Danのアルバムと同様、豪華メンバーが多数参加しています。Marcus Miller、Jeff Porcaro、 Larry Carltonなどなど、正直書ききれないほどです。内容も、”Aja”、”Gaucho”あたりの、聞いた感じはとても洗練されておしゃれなサウンドでありながら歌詞が辛辣という、まさにDonald Fagenの世界を展開してくれています。アルバムのライナーには、「このアルバムに収められている曲は、50年代後半~60年代前半に北東部の郊外で育った普通の若者が想定されている」と言うコメントがあり、これが本作品のコンセプト、ということが言えます。
本アルバムから最初のシングルヒットとなった “I.G.Y.” は、International Geophysical Year の略で、日本語では「国際地球観測年」と訳されています。1957-1958年に行われた国際プロジェクトで、世界各国で行った観測結果を持ち寄って地球の研究をやろうというものでした。(詳細はお調べ願います…)
日本も戦後それほど経っていない状況であったものの、結果的に参加することとなり、その一環で昭和基地が建設され今に至る、という流れとなっています。
「アップタウンでは道で殺人事件が起こった」 というフレーズで始まる “Green Flower Street”、タイトルは「新しい開拓者」、でも彼は核シェルターの中に住んでいるという設定の “New Frontier” など、流れるようなメロディーからは想像もつかないシビアな歌詞が続きます。しかし、個人的に聴き所はやはり美しいメロディ。”Maxine”でのGreg Phillinganesのピアノ、Michael Breckerのテナーサックスのソロにはついうっとりしてしまいます。
そして特筆すべきは、そのサウンドクオリティの高さです。1982年の作品だから、今この記事を書いている2008年から見ると26年も前の作品だが、とても恐ろしいほど音がきれいである。四半世紀後の今のサウンドとの違いがなかなか見つけられず、当時の最新の音響技術を駆使して作られた作品、ということができます。これを将来リマスタリングしたらもっと素晴らしい音になるのでしょうか…? 想像がつきません。
Tracks:
01: I.G.Y. (What A Beautiful World)
02: Green Flower Street
03: Ruby Baby
04: Maxine
05: New Frontier
06: The Nightfly
07: The Goodbye Look
08: Walk Between The Raindrops