Diana Krall / Glad Rag Doll

ダイアナ・クラールの現時点の最新作(2012年発表)。まずジャケット写真にドキッとします。かなりインパクトがあります。LP盤があればいいだろうなあ、というのが第一印象。

さて中身ですが、ザクッと説明してしまうと1920~30年代に流行した名曲をカバーしたアルバムとなっています。当時の音楽をアレンジして録音すると言うと、ピアノを奏でながら歌うジャズ・シンガーのダイアナ・クラールの姿が思い浮かびますが、そうではありません。というのも、本作のプロデューサーは、いつものトミー・リピューマではなく(なんと)T・ボーン・バーネットが担当しているのです。旦那のエルヴィス・コステロの人脈ということを考えるとこの選択は意外ではないのですが、当然のことながら音の作りは正統派ジャズという感じではなくルーツ系アメリカン・ミュージック、それもかなりブルース寄りと言う雰囲気となります。
特に “I’m A Little Mixed Up” なんかは、ライ・クーダーあたりが出てくるのではないかとさえ思えるアーシーさ。これがまた良いんです。

もっとも、ジャズ的なアプローチもない訳ではなく、”I Used To Love You But It’s All Over Now” なんかで聴かせるアコースティック・ギターとピアノによるアンサンブルなんかを聴くと、古き良き時代のジャズ〜スイング的であって、この辺は従来からのダイアナ・クラールファンが安心するサウンドになっております。だけど、全般的にはこのようなタイプの曲は少ないので、以前からの彼女の作品の延長で聴いたら意表をつかれると思います。
ただ、私はこのアプローチは大好きで、ダイアナ・クラールの渋いヴォーカルとバックトラックが本当にマッチすると思っています。

さて、参加ミュージシャンについて少し。基本的にはT・ボーン・バーネット〜エルヴィス・コステロの人脈から、ですね。
“There Ain’t No Sweet Man That’s Worth The Salt Of My Tears”や “Lonely Avenue”などでの歪んだギターで分かる人には解ると思いますが、マーク・リボーがギターで参加しています。その他、ブルーグラス界に近いギタリストで、リッキー・スキャッグスやサム・ブッシュとの共演で知られるブライアン・サットン、それにハワード・カワード(ちなみにコステロの変名です)などなど。このメンバーで正統派ジャズを求めてはいけませんね。

なお、本作には「デラックス・エディション」もリリースされていまして、追加で収録されている “Glad Rag Doll”の Alternate Version 他3曲は、彼女のピアノとヴォーカルを中心にした作品となっていて、これを聴いてホッとするダイアナファンは多いでしょう。
(下記の収録曲はデラックス・エディションのものです)

賛否両論に分かれる作品だとは思いますが、先入観さえ取り除けば、まさにお見事!な作品です。私は好き。

Tracks:
01: We Just Couldn’t Say Goodbye
02: There Ain’t No Sweet Man That’s Worth The Salt Of My Tears
03: Just Like A Butterfly That’s Caught In The Rain
04: You Know – I Know Ev’rything’s Made For Love
05: Glad Rag Doll
06: I’m A Little Mixed Up
07: Prairie Lullaby
08: Here Lies Love
09: I Used To Love You But It’s All Over Now
10: Let It Rain
11: Lonely Avenue
12: Wide River To Cross
13: When The Curtain Comes Down
14: As Long As I Love
15: Glad Rag Doll (Alternate Version)
16: Garden In The Rain
17: There Ain’t No Sweet Man That’s Worth The Salt Of My Tears (Alternate Version)


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